ベニーケー

聴くと思い出す

何年経っても無性に聴きたくなる

 

一人でイギリスに旅行に行ったとき

2007年の4月

しきりに会いにきてと言われて

わたしも放浪してた時期

 

知人が通う大学があるケンブリッジに2週間滞在した

そこの寮を拠点に電車に乗ってロンドンに行ったり

湖水地方に行ったり気ままに過ごした

いつも駅に車で迎えにきてくれた

 

電車の移動中は、いつもベニーケーを聴いていた

外国人の中に目立ったであろうアジア人のわたし

でも、旅行中誰もわたしのことなど目に入ってなかった

 

それでも、全く寂しくなかった

帰りたいと思わなかった

ただ、イギリスにいても自分というものは分からなかった

 

滞在させてもらった友人には本当にお世話になった

彼がいなければ一生イギリス行かなかったかもしれない

 

わたしが日本に帰国する最後の日

彼は中華料理を作ってくれた

可愛いコック帽子をかぶって、手際よくニンニクやらネギやら切って

中華鍋で麻婆豆腐を作ってくれた

熱くて恥ずかしくて寂しくてあまり口に出来なかったけど凄く美味しかった

 

料理や食事って技術じゃなくて気持ちを込めるから美味しいんだって知った

 

帰りたくなかった

ヒースロー空港まで送ってもらった時の記憶がないけど

飛行機の中、わたしは泣いてた

全ての旅を終えて気づくなんてね、ありがとうって。

 

ただただ泣いていた 理由はわからないけど寂しくて

もう会えない気がして 帰りたくなくて

それでもわたしは今の生活を選んだ

なぜかわからないけど、外に行くことを選ばなかった

 

今があるのもわたしが選択した結果の今

 

今、近くで夫が飾ったクリスマスツリーがサンルームで光ってる

 

幸せなんだと思う 無理矢理そう思おうとしている

でも、それはわたしが望む幸せとは違う

 

どこか遠くに消えたくなる

ベニーケー聴きながらそんなこと考えるクリスマスの夜

 

あの頃に戻りたいとは思わないよ

あの人に会いたいとかもない

それでも、どうすればいいのかわからない

誰かが助けてくれるわけじゃない